女性は強い。
ここベトナムでは、女性の社会進出は日本より進んでいます。
女性が管理職に就くことはごく当たり前のことですし、
家庭でも重要な決定を下すことが多いのは女性です。
歴史的にベトナムは他国に侵略されていることが多かったため
男性が戦争に出征しているあいだの社会や家庭を女性が守ってきた
という背景があるようです。
それに加え、映画やドラマ、歌謡曲でも女性賛美があふれています。
私が多く目にする(妻が好んで見る)ベトナムドラマでは、
男性はほぼ決まって酒好き・賭け好き・女好きのどれかにより
失墜してしまうのですが(実際にこの手の実話はよく耳目にします)
女性の機転と慈悲によりハッピーエンドを迎える、がセオリー。
ただし、実際のハッピーエンドはあまり聞きませんが
それを見て妻はいつも決まって満足そうに「あなたはどう?」と
その意図をはかりかねる感想を求めてくるのですが、
うかつに「そんなことないよ」と言ってしまうと、
実際にあった私の過去のやらかしを洗いざらい思い出し怒りをされ
あとあと面倒なため「よかったねえ」と
濁した答えをすることにしています。
そんな刷り込みを受けて育ったであろう、私の優秀なベトナム人
同僚男性も夫婦円満のたしなみを決しておろそかにしません。
終業時間の17時になると、アラームのごとく鳴る妻からの電話には
3コール内で即答し、帰宅時間と帰宅途中の買い物の確認、
最後に「愛してる」の一言、の定時報告は欠かしません。
私も多分に漏れず、人目を忍んでこの帰宅コールのルーティンに
従うのですが、ときに外出中やWebミーティングなど
コールに出なかったときは惨事を引き起こします。
疲れて帰宅していても、口も利かないうえに食事も用意されず
事情を説明しても、挙句「私と仕事と。。。」と言われる始末。
こうなると、妻の気が鎮まるまでは放置するしかありません。
近所のコンビニで適当にカップ麺を買ってきてその場をしのぎます。
そういえば。
私の義父が親戚の葬式でしこたま泥酔し
辺り近所の目もはばからずわめき散らしながら、
ひとり深夜に帰ってきた時のこと。
酔いつぶれて気が大きくなっている義父を見るやいなや
普段はえびすの穏やかな義母の表情がたちまち修羅の形相になり
ふらつく義父を手際よく玄関の外へ引きずり出したかと思えば
間髪を入れず南京錠を2個念入りにかけて閉め出したのでした。
その一瞬の間には、一切の逡巡も容赦もありません。
私は扉の外から聞こえる義父のうめき声に
いたたまれなさを感じながらも、
家族(全員女性)の無言のにらみに負け、何もすることができません。
結局義父は、すっかり意気消沈し、朝日が昇り切ったころに
家に引き入れられたのですが、それを目の当たりにしたときに
遠い日の自分を重ねたことを思い出しました。
(あまり遠くはありませんでしたが)
こうして、我が家の暗黙の家訓が引き継がれていくかと思うと
末代の子孫にまで、申し訳ない気持ちにもなりますが
これも世界平和の一端を担う
ベトナムの男性の責務と考えることにしています。


